”えぞりす食堂おしながき”連載2周年を記念して?これまで番外編や緊急速報として書いていたものを別連載にすることにしました。”奮闘記”では観察で出合ったこと、感じたことを自由なスタイルで書きたいと思っております。2本立てとなりますがどうぞよろしくお願いいたします。
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1. 老木ハンノキから降ったもの
さて6月10日お昼前のこと。記念館の池の横を通りかかったところ、とある場面に遭遇しました。池の周辺では、今年巣立ったばかりのカラス幼鳥が2羽ほど、まだ園内研修中です、といった面持ちでウロウロしています。これはいつもの光景でしたが、突然近くの茂みから1羽の水鳥がものすごい形相で飛び出しカラスを威嚇しました。全身の毛を逆立て羽を半ば広げながら突進する姿は、いつもののんびりした水鳥からは想像できません。カラスがたじろいで少し後退すると、水鳥はすぐさま茂みの中にかけ戻りました。
ただならぬ気配を感じ、茂みと2羽のカラスの間を割るような位置に立ちました。そしてカラスが茂みに近づくのをやんわり阻止すべく静かに歩き回りました。(ここでカラスに石を投げたり棒を振り回したりするのは絶対お勧めできません。何の効果もないどころか、いつか必ず逆襲されます。)カラスの方も、どうしたものかと私の動きに合わせてウロウロしたり、近くのナナカマドに止まってガッと鳴いてみたりしていました。そうこうするうち、いきなり横のハンノキから何か茶色っぽいものが降ってきました。苛立ったカラスが朽ちた樹皮を落としたのかしらと思いました。でも次の瞬間、信じられない光景が目に飛び込んできたのです。
私の足元にボタッと落ちたその物体、やおらもそもそ動き出したかと思うと、鳥の形になって歩きだしました。な、なんということでしょう。水鳥のヒナです!!ヒナが木から降ってきた!!!
ヒナはウィウィウィウィ・・・と鳴きながらおぼつかない足取りで一生懸命母鳥を探しています。それに呼応するように、茂みの中から親鳥がルルルルル・・・と鳴きます。早くこっちに来なさい!早く、はやく・・・!と聞こえます。私も視線はカラスに向けたまま、思わず、早く行きなさい!と背中越しに声をかけました。
ヒナは親鳥が隠れている茂みへ向かい、しばらくすると双方の鳴き声がピタリとやみました。きっと無事そばにたどり着いたのでしょう。私は引っ込みがつかなくなっているカラスの様子を見ながらなお数分その場にいたのですが、何と同じことがもう一度繰り返されました。えーっ、もう1羽いたの!?と再度緊張にさらされましたが、幸いこの子も無事茂みへ入っていきました。良かった・・・! 今回は相手が比較的おとなしいハシボソガラス幼鳥だったことが幸いでした。これがハシブトガラス成鳥だったとしたら、あまり想像したくはありませんが厳しい展開もあったでしょう。咄嗟にカラスからヒナを守ろうとした私の行動は、野生動物を観る者としては賞賛されるものでありません。でも生れ落ちたばかりの命を少しでも繋げるチャンスを作りたいと思うのも、抗い難い人情。動物を観ていると命を前にいつも葛藤があります。
それにしてもいったい何羽のヒナがこのように巣立っていくのでしょうか。巣を出る時はまさに清水の舞台、それを乗り越えた瞬間から自分の命は自分で守らなければなりません。巣立ったばかりのヒナたち、明日生きられる可能性と生きられない可能性、後者のほうが高いかもしれません。それでも、ただ一所懸命生きています。ひたすら、生きています。親も必死で育てています。素晴らしいの一言です。
さてヒナが降ってきた洞のあるハンノキですが、リスたちも子育てを行う大切な樹木です。今シーズンはどのリスも使わず不思議に思っていましたが、先客がいたのですね。全く気づかずお恥ずかしい限り。そして実はこのハンノキ、古くて危険な樹木として市による伐採の対象となっていました。今のところ何とかそれを免れているという状況です。今回のことで、この樹木を繁殖に利用しているのがリスにとどまらないことが明らかになりました。古い樹木が次々と伐採される中、とても貴重な存在です。新しい命を降らせる木、何とか皆さんで守っていきませんか?
なおこの出来事の間、写真撮影はしておりません。代わりに、すばらしい動画を見つけたのでリンクを貼り付けておきます。カラスの登場こそありませんが、まさにこの営みが目の前で行われました。
当日は風もあり6月にしては肌寒い日でしたが、自然愛にポッと灯がともる素晴らしい日となりました。
*今回の水鳥は、記念館によく来るカルガモかと思っていましたが、似たようなヒナの色で樹洞から巣立つオシドリのようです。